歯科から見て、歯にとって本当に良い材料とは何でしょうか?
今現在の日本の歯科の多くは見た目に注目が行きがちなため、白い材料であるセラミックがよいとされる傾向にあります。さらに白い金属と言われるジルコニアはよりよい材料とされています。
しかし、本当にそれは正しいのでしょうか?確かに見た目は大事ですが、人の歯は見た目以外にも大事な役割を持っているはずです。今回は歯に使う材料について考えてみましょう!
このブログでは6つに分けて歯にとっていい材料・治療について説明していきます。
まずは歯の役割についての考えてみましょう。歯の役割と言って一番最初に思い浮かぶのは噛むことでしょう。ほかには話すこと、笑った時の見た目などの役割もあります。芸能人な人たちは歯を白くしている人が多いですが、歯が白いと話している時や笑った時に清潔感が出てより綺麗に見えます。そのため、見た目の役割も大事な要素の一つです。
しかし、本当に大事なのはやはり日々の食生活にかかわってくる噛むことではないでしょうか?噛むことに着目したときに歯にとって一番良い材料とは何なのでしょうか?
セラミックは茶碗などと一緒で陶器でできています。イメージしてもらえばわかると思いますが、茶碗は曲げたり変形させることは難しい硬い材料ですが、落とすと簡単に割れてしまいます。これは陶器には耐衝撃性という強度が少ないことに起因します。人間の噛む力は体重と同じと言われていますので、男性で60㎏、女性では50㎏程度あると言われています。このような力が陶器にかかったら割れてしまうというのは想像しやすいでしょう。そのため、セラミックで治すときは割れないように歯を多く削る必要があります。すると、神経に近いところまで削る必要が出てきますので、神経が炎症を起こしやすくなってしまいます。また、茶碗は表面がとてもツルツルしていると思いますが、陶器の特徴の一つなので、セラミックも表面がツルツルしています。そのため噛んだ時に滑ってしまいうまく力が入らなくなってしまいます。
そのような点でセラミックは歯にとってあまりいい材料とは言えません。
セラミックよりいい材料といわれているジルコニアはどうでしょうか?そもそもジルコニアとは白い金属と言われるくらいとても高い強度を持ったセラミックスの一種です。見た目はセラミックと同様に白くて目立ちませんし、セラミックと比べて強度が高いので割れる心配はほとんどないです。そのためセラミックのように歯を多く削る必要はありません。しかし、セラミックと同様にツルツルしている性質を持っているため、滑ってしまう性質は変わりません。また強度が高すぎるため、普通の歯より強度が高くなってしまいます。そのため、噛むたびに普通の歯が徐々に削れていってしまいます。普通の歯は再生しないため、人工物で修復しないと噛み合わせが低くなってしまいます。さらにその人工物も削れてしまうため修復を繰り返しているうちに修復箇所が大きくなり、最終的に被せ物になってしまう可能性もあります。
そのような点でジルコニアは歯にとっていい材料とは言えなそうです。
ゴールドについて考えてみましょう。ゴールドとはいわゆる金を歯に詰める材料として加工したものです。金100%は歯に詰めることが難しいため、正確には他の金属が少し入っています。金は普通の金属と比べて柔らかいことが特徴です。金属であるため、割れたり壊れたりすることはほぼありません。(金属が壊れるような衝撃には歯自身も耐えられないため、金属だけ壊れるということはないといってよいでしょう)そのため、削る量は歯から外れない必要最低限の量だけ削れば良いので歯を削る量は少ないです。
また金は金箔を想像していただければ分かりますが、金箔ほど薄く延ばすことができるというのが特徴です。金箔を触ったことがある人なら分かりますが、金属とは思えないほど柔らかいです。この性質を活かして、歯に詰め物として付けた後に薄く延ばすことで歯にとてもなじみます。そのためつけた違和感はなくなりますし、そのあと噛むことによってさらに伸びますのでどんどん違和感がなくなっていきます。
見た目は金のため目立ってしまいますが噛むこと、歯への影響の少なさを考えるとゴールドは歯にとって最高の材料と言っても過言ではないでしょう。
セレックシステムという言葉をご存じでしょうか?最近取り入れている歯科医院が増えてきてるもので、セラミックを早く作ることができるシステムです。歯科医院によっては当日中に完成させることができる医院もあります。具体的な説明をすると口の中を光学印象という連続的な写真を撮って型取りができる機械でパソコン上にデータを取り込み、それをパソコン上のCADCAMというソフトを用いて設計を行い、3Dプリンターで製作するというものです。一見素早く作れるうえに、歯も白くきれいになるのでいいものと思われがちですが、数々の落とし穴があります。
まず、一つ目は先ほど説明した通りセラミックには数々のデメリットがある点です。
二つ目が光学印象の精度についてです。光学印象は高速で写真を撮ることによって口の中を正確にデータとしてパソコンに取り込む方法として用いられていますが、口の中は常に唾液があるため光が乱反射してしまいます。そのため、正確に撮れたと思っても実際細かいところで画像がゆがんでいたりしていて、正確に撮れていません。このまま作ってしまうと実際と異なるため、ぴったり合わなくなり、合わないところから虫歯になったりしてしまいます。
またパソコン上で設計するので細かいところの設計が難しいですし、3Dプリンターで作るので、細かいところを再現するのが難しく、実際に手で作るよりもぴったり合わなくなってしまいます。
このような点からセレックシステムにもデメリットがあります。素早く歯をきれいにしたい時には便利ではあるので用途によっては有用な方法ではあるのは確かです。
歯にとって最高の材料について考えてみましたが、いかがだったでしょうか?歯の機能のどこに重点を置くかでいい材料は変わってきます。プロの観点から言いますと歯の機能は噛むことにありますので、ゴールドが最高の材料であると思います。皆さんには治療を受ける際はよく考えたうえでご自身に合った治療法を選択していただけたらと思います。