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大切な処置!ラバーダムとは?

大学病院や根管治療が得意な先生のいる診療所でラバーダムという処置を行われた方がいると思います。ラバーダムとはゴムを歯にかける処置なのですが、普通の歯医者さんではあまり行われることはありません。

今回はそんなラバーダムとはどんな処置なのか、使うとどんないいことがあるのかについて詳しく書いていきます。

①ラバーダムとは?

 そもそもラバーダムという言葉自体を聞いたことがないという方がほとんどではないでしょうか?ラバーダムとは簡単に言うと、ゴムを歯にかけてお口の中と切り離してあげる処置のことです。

 そう言われてもあまりピンとこないかと思います。イメージとしては壁などに特定の文字や絵を描きたいときにその形に切り取った紙にスプレーをかけるとほかの場所には色がつかないのできれいに書けますよね?あの紙がラバーダム、書きたい形が歯のイメージです。

 

②ラバーダムのメリットは?

 切り離すことのイメージはできたと思いますが、何のために切り離す意味があるのでしょうか?

 まず一つ目は先ほどの紙のイメージと同じように治療するところ以外を傷つけることを防ぐ目的があります。ほかの歯を削ることはほとんどないのですが、頬っぺたが分厚くて歯に密着している人は頬っぺたを切ってしまうことがありますし、唾がたまって飲み込もうとして舌が動いたしまうと舌を切ってしまったり、お口の中の治療には様々なリスクがあります。そのリスクをほぼゼロに抑えることができます。ラバーダムはゴムでできているので、穴が開くことはなく、機械で切ってしまっても切れたゴムが機械に巻き付くため機械で切るリスクがほとんどなくなります。

 二つ目はお口の汚い環境から治療するところを分離する目的です。お口の中は常に唾液で満たされていて、唾液によって食べかすなどが流れてくれるなどのメリットはありますが、この唾液にはとても多くの細菌が潜んでいます。虫歯や歯周病の原因となる細菌たちもこの唾液の中に溶けているため、この唾液に触れているところは常に感染のリスクがあります。せっかく治療を行って虫歯菌を取り除いたのにもかかわらず、唾液が入った状態で治療をすると感染のリスクが増えてしまいます。虫歯の治療の場合は詰め物の下に新しく虫歯ができてしまったり、根管治療の場合は治療回数を重ねても治らない原因になってしまいます。

 三つ目が使用する薬剤・治療器具の誤嚥を防止する目的です。根管治療を行う際に特に重要な目的です。根管治療は歯の神経が感染して根っこの先まで感染し、膿がたまっているため強力な薬剤を使い、きれいに洗浄することが必要です。しかし、強力な薬剤は人体に影響がないわけではないため、飲み込んでしまうと危険です。また、根管治療は洗浄に小さな針のような器具を用いるため、これを口の中に落とした場合口の中を怪我する可能性がありますし、飲み込んでしまうとのどに刺さってしまうなどの危険性があります。ラバーダムはこれらのリスクをなくすことができます。

 

③なぜラバーダムを用いらないの?

 先ほどラバーダムのメリットについて書いていきました。ラバーダムにはたくさんのメリットがあり、行ったほうが絶対に良いです。しかし、多くの歯医者さんでは使われていません。これはなぜなのでしょうか?

 一つ目は手間がかかることがあります。ラバーダムには工程としてラバーダムに治療する歯の位置に穴をあける、穴に歯にかけるための金具を通す、金具を歯にかける、歯を穴に通す、歯と歯の間にフロスを通ししっかり穴と歯を密着させるという5つの工程があります。慣れている先生だと5分程度で行いますが、慣れていない先生が行うと10~20分かかってしまいます。この時間を無駄と考える先生も多く、一人当たりの治療時間も伸びてしまうため、行わないという選択をする先生もいます。

 二つ目は保険診療の仕組みです。ラバーダムを行って診療を行っても、用いずに診療を行っても保険診療の点数に変わりはありません。保険診療は制度的に短時間で多くの患者さんをみないと利益が上がらない仕組みになっているため、ラバーダムを行って診療を行った場合ラバーダムを用いるのにかかる手間暇とメリットを比較した際に保険診療は制度的に短時間で多くの患者さんをみないと利益が上がらない仕組みになっているため、手間暇がかかってしまうことを嫌がる先生が多いのです。

 三つ目に歯によってラバーダムが難しいことがあります。根管治療を行っている際は虫歯を削っているため、歯がほとんどない場合が多いですが、ラバーダムは歯がある程度残っている状態でないと行うことができません。そのため、ラバーダムをかけるために歯に歯科材料を盛らないといけません。また、歯が極端に傾いている状態だと歯にかける金具が滑ってしまい、うまくかかりません。これらの要因でラバーダムをかけるのに時間がかかってしまうため、ラバーダムをかけることを断念する先生もいます。

 

④ラバーダムを用いたほうがいい治療

 ラバーダムは実際どんな治療を行う時に用いるとよいのでしょうか?もちろん全ての治療に用いればいいというわけではありません。用いるべき治療とそうでない治療について説明していきます。

 用いるべき治療一つ目は根管治療です。根管治療は歯の神経があった場所が細菌によって感染しているため、洗浄する治療ですが、その際に唾液が入ってしまうと感染源が入ってしまい、本末転倒になってしまいます。また、歯の治療の中で最も使う薬剤が多く、器具も小さいものが多いので一番ラバーダムの恩恵を受けることができます。ただし、先ほども書いた通り歯が残ってないことが多いのでそこは調整が必要です。

 次は虫歯の治療の中でその日のうちに詰める治療です。虫歯の治療は虫歯をとって穴が開いてしまった箇所に詰め物をするのですが、この際に唾液が入ってしまうと詰め物の下に虫歯の感染源が入ってしまうため、詰め物の下に虫歯ができるリスクが高くなります。詰め物の下の虫歯は見た目からは分かりずらいため、中で進行して気づいた時には大きな虫歯になっていることも多く、歯の寿命を縮めることになります。

 逆に用いる必要のない治療は型取りをする治療です。型取りをする前には型取りする歯がしっかりと形が作られているか確認する必要があります。その際に周りの歯と見比べたり、向かい側の歯とどれくらい幅があるかなどを確認する必要があるため、ラバーダムをつけてない状態でないと確認できません。そのため、ラバーダムを必要としません。

 

⑤まとめ

 今回はラバーダムについて説明していきました。ラバーダムは基本的にはやるべき処置ですが、手間暇がかかるため行われないことが多いことがご理解いただけたと思います。保険制度で治療を行う上ではラバーダムを用いない先生は多いため、ラバーダムを用いての治療を希望される方は自由診療を選択されるか保険でもラバーダムを用いた治療を宣伝している歯医者さんを選ぶのが良いと思います。