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何をしている?歯の神経の治療とは?

 皆さんは虫歯が大きくて神経の治療になりますと言われたことはないでしょうか?治療を何回も行っているのに症状が治らない経験をした方もいると思います。神経の治療とは何なのか?

 今回は神経の治療とはどのような治療なのかについて説明していきたいと思います。

①歯の神経とは?

 まず初めに歯の構造から説明しようと思います。歯は大きく分けて四つの構成からできています。

 

 一つ目が私たちが直接見ることができる一番外側の構造であるエナメル質です。エナメル質は人体の中で最も硬いと言われる構造で、無色透明の2~3㎜の厚みの構造です。最も硬い構造のため、むし歯に強く歯の一番の防衛機能の役割と、ものを噛み切ったり細かく砕く食べるのに必要な役割を担っています。そのため、エナメル質が欠けたり、すり減ってしまうと、染みたりむし歯になりやすくなる原因になります。

 

 二つ目がエナメル質の下にある象牙質です。この構造は神経と近いため、神経の枝が届いています。そのためこの構造がエナメル質が欠けることにより露出した場合、染みることが多いです。またエナメル質に比べてむし歯になりやすいため、むし歯がエナメル質から象牙質まで広がった場合に広がる速度が上がり、神経まで到達するのが早くなってしまいます。

 

 三つ目が歯の根っこを骨とくっつけているセメント質です。この構造は基本的に歯茎の下にあるため、見えることはありません。歯周病(歯槽膿漏)などで歯茎が下がった場合はセメント質が露出し、削れたり欠けたりすることがあります。その場合はセメント質の下の象牙質が露出して、染みたり虫歯の原因になります。

 

 最後が歯髄という歯の神経になります。歯髄は歯の根っこの先から入ってきて歯の真ん中に存在している構造で冷たいや熱いなどの温度感覚を主に感じている場所になります。神経から血液を供給したり、新しい象牙質が作られたりすることによって歯が丈夫でいられるようになっています。そのため、歯が健康でいられるために最も重要な構造と言っても過言ではないでしょう。

 

②神経の治療とは?

 では、なぜそのような大切な構造である神経を取る治療というものが存在しているのでしょうか?

 神経がむし歯の菌に感染したり、強い衝撃によって死んでしまったりすると、死んでしまった細胞をきれいにしようと白血球などの免疫機能が作用して炎症を引き起こします。炎症により痛みが起きてきて、最終的には膿となって歯の根っこの周りに溜まります。歯以外の場所では神経が菌にさらされることがなく、血液の中に菌が入ることがないですが、歯ではむし歯などにより起きてしまいます。一度感染した神経は取ってしまわないと膿が大きくなり続けてしまうため、神経を取る治療というものが存在するのです。

 では、具体的にはどのような治療方法なのでしょうか?治療方法は先ほど説明した歯髄が存在している歯髄腔まで穴をあけ、細い器具(リーマーやファイルと呼ばれる器具)を用いて神経を取っていきます。感染している神経をすべて取って感染物質がすべてなくなった所でガッタパーチャー(防腐剤)を神経があった場所に詰めることにより再感染を防止します。綺麗に詰まってないと再感染の可能性が高くなります。また、治療期間のすべてにおいてラバーダムという処置が必須となっており、ラバーダムを行わないと治る確率が著しく下がってしまいます。

 

③ラバーダムとは?

 先ほど説明の最後に出てきたラバーダムについて説明します。

 ラバーダムとはお口の中の感染物質である唾から治療中の歯を分離するのに必須の処置になります。治療を行う歯に金具をかけてその金具にゴム製のシートをかけることによりお口の中と歯をゴムのシートで分離します。これにより、お口の中に大量にある細菌が溶けている唾から治療中の歯を守ることができ、感染がない状態で治療を行うことができます。この処置を行うと行わないでは治療の成功率・再感染率・効率が全く異なり、より早く、より安全に治療を行うことができます。感染リスクの高い神経の治療はもちろんのこと、再治療のリスクがある虫歯の治療にも必要な処置です。

 

④マイクロスコープとは?

 神経の治療で必要なものはもう一つあります。それがマイクロスコープです。

 マイクロスコープとは歯医者における顕微鏡のようなもので、性能がいいものだと最大30~40倍の倍率で見ることができます。歯髄はすごく細い管の形をしていて、神経の先は0.3㎜ほどしかないため拡大してみないと歯髄の中に何があるのか分かりません。歯髄の中の炎症物質や異物(器具など)、むし歯などを見るためにはこのマイクロスコープは絶対必要な道具になります。

 

⑤まとめ

 今回は神経の治療についてお話ししました。いきなり神経の治療をしましょうと言われて何が何だかわからないまま治療されてしまった方も多いかと思います。しかし、実際に何をされているかを知っているのと知らないのでは全く違います。また、治療をしている際にきちんとラバーダムを行っているか、マイクロスコープを使っているかも注目してみてください。神経の治療を行っているのに症状が治らない、改善しないなどの症状がありましたらぜひ当院へご相談ください。