歯を削らなくていいアマルガム修復

当院ではアマルガムという材料を用いて治療を行っています。

あまり聞き覚えのない材料だと思います。

ここではなぜ当院ではアマルガムを用いているのかについて5つに分けて説明しています。

アマルガムは危険?

 アマルガムは2016年3月末まで日本の保険診療として認められていた歯に詰める材料で、約200年前にフランスで使用され始めたといわれている材料です。1990年代頃までは日本の保険診療の主流として用いられていましたが、水銀を含むため、危険とされ用いられなくなっていきました。

 しかし、実際には危険な材料ではなく、人体に悪影響を及ぼすことはありません。もし人体に悪影響を及ぼす材料であるならば、200年もの間使用されるわけがありませんし、審査基準が厳しい日本の保険制度に長い間導入されるはずがないのです。つまり、アマルガムは危険という話は嘘なんです。


アマルガムとは?

 そもそもアマルガムとはなんなのか?について説明していきます。

 アマルガムとは水銀を用いた歯科直接修復材料です。水銀の融点(固体から液体に代わる温度)がとても低く、他の金属と合金を作りやすいという特徴から、即日で治療が完了する歯科材料として用いられています。

 アマルガムが危険視されていた原因に材料に用いている水銀が挙げられますが、アマルガムに用いられている水銀は無機水銀という水銀で、公害の原因である有機水銀とは違い、人体への影響は大きくないです。合金としても安定しているため、水銀が体内に溶け出しって蓄積するということもほとんどないです。保険診療で長い間使用されていて、健康被害を訴えた症例がないことが何よりの証拠です。


直接修復とは?

 アマルガムは虫歯の治療のうちの直接修復にあたります。もう一つは間接修復と言って当院ではゴールドを用いて治療を行っています。

 直接修復とは虫歯をとって穴が開いてしまった部分に当日に詰め物を詰めることによって穴をふさぐ方法です。穴の形を型取りし、その次の治療でふさぐ間接修復と違い、当日で治療が終了します。

 メリットとしては、即日から噛むことができること、穴をあけたままにしないことから感染のリスクを抑えられることが挙げられます。

 昨今の歯科治療では治療にラバーダムを用いないで治療を行う歯科医院が増えていますが、感染のリスクを考えたらありえない治療法です。ラバーダムを使用しないで行う直接修復は感染のリスクを抑えるというメリットはないといっても過言ではないでしょう。

 保険診療の直接修復ではレジン修復が用いられますが、アマルガム修復とどう違うのかについて次の項目で説明していきたいと思います。


レジン修復とは?

 保険診療で用いられているレジンについて説明していきます。

 レジンとは簡潔に言うと光で固まるプラスチックです。しかし、プラスチックだけでは強度が足りないため、ガラスの成分を混ぜて強度を強化しています。自由診療でガラスに成分がより多く含まれたハイブリッドレジンというものを宣伝している先生をよく見かけますが、そこまで強度は変わらず金属に比べかなり低いです。光で固まるという特徴と色を操作しやすいという特徴から歯科材料に用いられています。光で固まるまでは操作可能なので形が作りやすく、調整が簡単なため誰が行ってもある一定のレベルを確保できるのが特徴です。

 しかし、逆に言えば人によって差が生まれにくく、誰にでもできる上一定のレベル以上の修復は求めることができません。(正直なところレジン修復の上手い下手はきれいに見えるかどうかだけです)どんなにきれいに修復できたとしても、プラスチックであるがゆえに強度が足りず、噛むたびに削れていくため、詰め物と歯に隙間ができて虫歯になりやすくなります。そして再び虫歯になってしまった際には再度治療が必要なのですが、色を歯の色に近づけているため、どこまでがレジンでどこからが歯であるかが非常にわかりづらく、より多く歯を削らないといけない場合が多いです。また、プラスチックはお口の中の唾液にさらされた状態が長く続いてしまうと、どんどん劣化していってしまい再度治療が必要になるのは必須です。また、レジンは固まる際に収縮するという性質を持っていて、この性質のせいで一番接着してほしいレジンと歯の接地面が浮き上がり、そこに唾液などが入り込むことで虫歯ができる要因になります。

 


なんでアマルガムがいいの?

 アマルガムは、合金であるため強度がとても高く、噛み合わせでもほとんど削れることはありません。また、固まる際に膨張する性質があるため、歯との隙間ができずに再び虫歯ができる可能性はほとんどないといっても過言ではないです。(ただし、アマルガム自体が劣化し、再治療になることはあります。)

 アマルガムはすぐに固まり、一時間後には噛める状態になります。虫歯によっては神経の近くまで虫歯が進行してしまっていることも多いと思いますが、アマルガムは神経刺激性が低いため、神経を残すという選択を行うことができます。神経に近い場合はMTAセメントという材料を用います。神経を残すという選択ができるというだけで歯を十年後二十年後も残せる可能性はぐんと高まり、長い目で見ていい治療法と言えるのです。

 ほかにも利点があります。それは金属であるため、レジンでは強度が足りず詰め物が不可能な歯と歯の間にも用いることができます。通常は歯と歯の間は間接修復を行う必要があるため、歯の削る量が増えてしまいます。それを即日で治せる上に必要最低限しか削る必要がないのです。

 さらにアマルガム自体に抗菌作用があるため、治療した場所が再び虫歯になりにくくなるだけではなく、周りの歯が虫歯になるのもある程度は抑える作用があります。再び虫歯になりにくいため、劣化で再治療が必要になった際にアマルガムだけを除去して再治療を行えばいいため、歯を多く削る必要がなく歯にとってとてもいい材料なのです。

 つまりアマルガム修復とは最も歯を残して行える治療であるわけです。