· 

歪んだ歯科医療、保険診療はすでに限界?

歯の調子が悪いけど「どんな歯医者を選んだらよいかわからない?」、「きちんと治療したいけどどんな治療法が良いのか見分けがつかない?」といった悩みはありませんか?

 

ここまで歯科医院を選ぶのが難しくなった背景は、「歯科医師過剰問題」と「患者数の減少」、「保険制度の事実上の崩壊による自由診療化」という3つの問題が同時に起こってしまったからです。

 

歯科医師過剰問題は、新しく歯科医になる先生が減っているにもかかわらず、今なお続いている問題です。

 

そして今、歯科では経営が成り立たせることが難しいほどの低い評価の保険制度による経営難で「歪んだ歯科治療が生まれ」(「保険診療の歪」についての動画はこちら)経営を成り立たせるための「患者さんの為になっていない自由診療まで横行する」(「自由診療でも危ない」の動画はこちら)実体があります。

 

今回は健康保険が抱える歯科医療の問題に焦点をあて、患者さんが「歯科業界の今」を知ることで、歯科業界がどんな問題を抱え、自分を守るための歯科医院の選び方を知ることができます。

 

昔の歯科は?

40年ほど前までは、歯科業界はまさに黄金時代、「歯科診療の予約券を高値で売りさばく」なんてダフ屋並みに歯科の予約が取れない時代があったのです。

 

歯科医院は患者さんであふれ、1時間待ちは当たりまえ、過労死する歯科医もたくさんいましたし、歯科医も経済的にも潤っていました。

 

今の歯科医院

そんな時代から40年、「年に200件近く倒産または廃業をする時代」、患者さんの争奪戦は激しさを増しています。

 

保険診療の点数の引き下げによる経営難から、歯科医院は

「大規模経営」

「訪問診療特化」

「審美歯科、インプラント、マウスピース矯正を中心とした自由診療」

「メインテナンス中心の保険や自由診療」

「少ない自由診療の患者さんで成り立たせる零細歯科医院」

といった経営形態に分かれてきています。

 

患者さんも、「選択肢が増えた」一方で「情報に流されず、正しい選択をしないと考えもしなかった事態」になる時代なったのです。

 

また相次ぐ保険点数の引き下げで、「保険診療で標準的な治療を受けることは難しい」というのは業界ではもはや常識。

 

「健康への投資としてきちんと治すためには自由診療もやむを得ない」の時代に完全に入りました。

 

歯科医院経営の難しさ

日本独特の問題

 

もともと、歯科医院の経営はほとんどが保険診療の収入でまかなわれ、多くの一般の患者さんも歯科治療に保険が効くことを半ば当たり前のように思っています。

 

しかし、実際は保険診療での報酬では、ほとんどの治療が採算ぎりぎり、多くの歯科医院は「よほどたくさん患者さんが来院していない限り、保険診療だけでは新たな投資すら難しい」といった状況です、医院によっては訪問診療に特化し、施設を回ることで多くの高齢者の指導をして、保険点数をあげています。

 

実は私も20年ぐらい前に、訪問診療を頼まれたことがありました。すでに訪問診療の先生が入っていたのですが、看護婦さんが不信感を抱き、義理の兄を通じてお願いされました。

 

すると、患者さんの歯石は全く取り除かれておらず、全員の歯石を取るだけでも大変で、歯石を取り終わると病院の臭いがしなくなったと、大変感謝されました。

 

このような酷い先生ばかりではないと思いますが、場合によっては指導料だけ欲しくて訪問診療をやっているところもあるので、ご家族で訪問診療を受けている方がいる場合は、チェックした方がよいと思います。

 

むしろまじめに訪問診療をなさっている先生の方が少ない気がします(自分がやってみた感想だと、どう考えても採算が合わないと感じました)

 

このように十分な治療技術を持たない先生が保険点数が高く、経営が成り立つ訪問診療に移行する事例も多いです。歯医者になった以上、歯科治療をやっていたいものです。

 

訪問診療は殆ど歯の治療らしいことはしないので、訪問診療専門で診療をしていると、そのうち根の治療は歯の治療ができなくなってしまいます。

 

実際にそのような先生に会ったことがあります。自由診療でなくても普通の診療でも難しい状態でした。

 

歯科独特の問題

歯科は、多くが零細企業であるため、「IT化が遅れている」ことも特徴です。個人経営の歯科医院も多くIT化が難しく、マイナンバーカードの導入で廃業する歯科医院も少なくないようです。

 

当院では2022年ごろよりSEに依頼し、プログラムをネットプログラムとして、多額の投資が必要となりました。

 

いまだに当院で使用しているレベルの在庫システムは歯科業界にはないと思います。当院の場合は特に漢方薬を多数取り扱うので、在庫の管理が重要になっています。

 

結局、自由診療だと「会計計算が煩雑で、手作業が多いアポイント業務」や、「遅れている在庫管理システム」がまだ存在しています。

 

また診療システムの効率化のための「4ハンドシステムやIMSによる滅菌システム」などが取り入れていないため、「診療効率が悪い」です。

 

また、日本のどの業界も同じですが、少子化による人手不足から、優秀な人材の奪い合いが生じており、雇ってもすぐ辞められてしまうなど、スタッフのレベルを一定に保つことも難しい時代なのです。

 

治療で頂ける金額が低い(平均して諸外国の1/20の一程度)

効率の悪い診療システム

🔽

零細経営で投資のゆとりがない、効率的なシステムを導入できていない。

🔽

治療の質を上げるゆとりがない。

🔽

不適切な自由診療に移行する医院が増える

🔽

歯科医療への不信

と繋がっています。

 

私の経験では歯科大学における教育は決して高くなく、開業難で歯科大学内は先生で溢れ、臨床教育を熱心にしたり、治療レベルが高い先生より、論文を多く書いた先生の方が大学に残りやすいシステムになっていて、教育レベルはさらに下がり環境が悪化しているように感じます。

 

治りたい人の医院選択術

ここではプロの目線からの歯科医の選び方を載せさせていただきます。

 

歯科は細かい作業の技術的依存度が高く、高度の医学的知識が同時に必要なため、本当に腕のある歯科医は一握りしかいません。「治療を受けるにあたり、家の近いとか、やさしそうだからといった理由で決めず、ネットで少なくとも数件候補を挙げて実際の先生の話を聞く」慎重さが必要です。

 

1、ホームページで医院の設備、技術、治療方針を確かめる!

そもそもホームページを作っていなかったり、ありきたりのホームページしかない医院はその時点で、選択肢から外れます。

 

ここで2割程度の歯科医院が選択肢から外れます。残念ながら腕があってもホームページが「ただの看板」と化している医院はたくさんあります。

 

しかし、それでは、医院の設備や、先生の本当の実力を測ることができません。今の時代は情報がとても大切です。

 

その情報を載せている医院であればある程度の診療に対するやる気と余裕があると判断できるわけです。

 

どんな設備を導入しているのか?(特に大切なのはCTやマイクロスコープ、感染予防機器)、また先生がどのような考え方を持っているかはとても大切です。

 

2、スタッフが多すぎる、手広く経営している歯科医院は経営本位になっていないか?医院の経営体系を判断する!

歯科治療の結果は個人技能で左右されます。「何をやるか!」ではなく「誰がやるか!」のほうが実は重要なポイントなのです。

 

患者さんを大切に思えば「自分の患者さんをほかの先生に絶対任せない!」のが当たり前。代診をたくさん雇い、分院展開の多い医院に自費治療を受ける価値があるかは疑問でしょう。

 

全員で院長と副院長2名ぐらいが目の届く限界、一人が担当するほうが安心なのです。

 

3、メインとしている治療をみる!

「根の治療」や「かみ合わせの治療」、「感染予防」に注力する医院は有望。しかし、審美押しでは、「美容治療」で本来の治療ではありません。インプラント押しの医院も「患者さんの将来を本当に考えているのか?」という観点から治療を受ける場所ではありません。

 

患者さんを大切に扱うことと、お客さんと捕らえることは違います。

 

医師のポリシーあっての治療です。「苦しんでいる患者さんをすぐに治療してあげる体制」はとても大切ですが、「保険も自費も何でもすぐ対応といったサービス」では「実は100円均一とブランド品を同時に売っている店」のようなものです。

 

また最近では多くの患者さんをさばくため「国家資格を持たないコーディネーターが治療の内容まで説明をする*」というグレーゾーンの歯科医院が増えています。

 

*治療計画や治療に使用する材料の選択をさせる説明は本来は治療の一部とみなされるため有資格者の仕事です。

 

歯科衛生士や完全な無資格者による補足的な説明だけであればまだ許されますが、治療計画の立案やその説明は資格の範囲を逸脱した医師法違反とみなされる重大なコンプライアンス違反です、医院の姿勢がここでも知ることができるわけです。

 

この時点で9割程度の歯科医院が選択肢から消えてゆきます。

 

4、感染予防にどれだけ力を入れているかをみる!

一般の方は、あまり実感がわかないかもしれませんが、「歯科治療のほとんどが外科手術です」歯科医院では感染対策は一般の医科の開業医よりもはるかにシビアです。

 

感染予防の管理の良し悪しは歯科医院の治療技術を測る上で最も重要なものです。

 

日本の歯科の感染予防レベルは決して高くありません。「アメリカで実際に行われている感染予防」が実は先進国では当たり前です。

 

 

5、治療としての本質を見抜く!

患者さんがよく勘違いし、誤った歯科選びをしてしまった例にとって、本質を見抜くための参考としてください。

 

1、患者さんの歯科医院選びに真剣度が足りなかった。

(実力のある歯科医は一握りです)口先だけがとてもお上手な先生がいらしゃいます。

 

やさしさと歯の浮くような表現で患者さんを集客しようと、大規模に経営する医院ほどお金をかけた巧妙なホームページを作っています。(優しい先生≠技術があって治してくれる先生)

 

2、業界での名声や専門医であること、有名な学会の学会員であること、認定医の免許を持っているなどといった、一見信用がおけそうな資格等を信じてしまった。

 

治療の技術に肩書きは必ずしも必要ありません。学会に属していたり、認定を受けていたりといった一つの基準にはなりますが、それだけでは完全には判断できません。

 

自分にあった先生を見つけましょう。

 

3、最新の治療技術のトレンドが首をかしげたくなることもしばしばである。

 

これらを選択してしまうのはむしろ患者さん自身にも問題があるのです。

 

人間の欲求が高度になり、機能を回復する本来の治療より審美を求める患者さんが増え、入れ歯を強固に嫌がって、インプラントを求めたり、金属による治療を嫌がって、奥歯にまで審美治療を求める傾向となっていますが、本来の健康を回復するという目的からはかけ離れています。

 

奥歯は人に見せるためにあるのではなく、物を噛むためにです。そこに強度や機能に問題を起こさないよう、配慮することが最も重要なのです。

 

4,今の患者さんは虫歯の数が減り、予防的な症状に対応することが必要となってきています。

 

特に「噛み合わせと身体」や、「全身の症状と歯」との関係は深いですし、歯の材料の劣化を放置することでも全身に大きな影響があることが分かってきており、たとえ虫歯が見つからなくても、車の傷んできた部品を交換するように、劣化してきた材料を交換する必要があります。

 

この様な予防的な治療に対応する歯科医院が必要になってきています。