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知って納得”マウスピース矯正”の裏

「マウスピース矯正ってよく見るけどどうなの?」、「ブラケットを使わない矯正で本当に治るの?」、「メリットはあるの?」そんな疑問はありませんか?

 

実はマウスピース矯正とは、本来のブラケットを用いた矯正治療とは全く治療法が異なります。

 

「部分的な歯の位置を治す程度の治療が向いている」ぐらいと考えておくのが無難ではないかと私は考えますし、業界でもきな臭い話をたくさん聞く治療でもあります。

 

マウスピース矯正では、今噛んでいる顎の位置を最終的な噛み合わせの位置である過程し、模型をデータ化しコンピュータ上で3Dシュミレーションで完成した歯並びと噛み合わせと作成します。

 

それをもとに今の歯並びから完成予測の歯並びまでの段階的な歯の移動のシュミレーションをコンピューター上で作成します。

 

この段階的なシュミレーションを3Dプリンターで模型にし、その模型から段階的な矯正用のマウスピースを作成するのです。

 

実際の治療では、この段階的な状態のマウスピースを交換してゆきながら歯列矯正を行ってゆきます。

 

ところで、歯と噛み合わせに関係している顎関節は体の他の関節と全く異なり、蝶番の様に決まった位置を中心にして動きません。

 

そもそも片側だけにある2つの関節が一つの下顎の骨と一体化しているので、とても複雑な動きをするので、噛み合わせを合わせる作業な歯科治療の中で最も難しいといわれています。

 

顎関節は極めて特殊で、前後左右上下と3次元的にかなり自由に移動できる関節です。

 

矯正中、歯の移動で上下の歯の当たり具合が変化するため、顎は均等な歯の接触を求めて3次元的に位置を変化してゆきます。

 

この顎の位置の変化によって、顎周り首周りの筋肉のバランスが変化し、全身に問題が起こることがあるのです。

 

つまり歯列矯正中、顎の位置は常に変化する可能性があるので、初めに取った型通りに顎関節の位置が収まり続けているかというとそうでないことのほうが多いと考えられるのです。

 

ブラケット矯正の様に、常に現在の顎の状況に対してゴムかけやワイヤーの調整でかみ合わせを作っている歯列矯正と比較するとマウスピース矯正の場合、治療の経過による顎の位置の変化には対応ができないといえるのです。

 

マウスピース矯正治療でも問題が出ない場合もあるとは思いますが、患者さんによっては奥歯が全くかみ合わないといった問題を起こす例も少なくないのです。

 

そう考えるとマウスピース矯正は噛み合わせが絡む全顎矯正には向いていないのではないかと私は思います。

 

「マウスピース矯正では顎の位置が変化するとは最初から想定していない」ので「顎の位置が変化してしまうといつまで経っても噛まない」ということもあるでしょうし、「体調まで悪くなって普段の生活に支障が出る」までになるケースがあることを耳にします。

 

ですから全顎的歯列矯正を行った場合マウスピース矯正だけではうまくいかなかった場合はブラケット矯正に切り替えて治療をやり直すこと必要があるのです。

 

そもそも、先生がブラケット矯正の経験が豊富でで、マウスピース矯正の特徴を知っている先生であれば、あえてマウスピース矯正に手を出そうとしないのではないかと私は考えます。

 

マウスピース矯正の利点である「目立たず、取り外せる歯列矯正」なのですが、それは治療の完成度とは相反するものであると私は考えます。

 

歯列矯正は歯科医療の中でも最も難しい治療技術で、歯を思い通りに動かすことは容易なことではなく、それは歯科医師の間では常識といえます。

 

マウスピース矯正はここ10年ぐらいで爆発的に増えていますので、今後様々な問題が起きてくるのではないかと危惧しています。

 

このような治療がはやった背景はできるだけ「高度なテクニックや、手間をかからない治療法を取り入れたい」という歯科医師側の考えと、「ブラケットをしないで、目立たず、歯列矯正を受けたい」という患者側の要求、「材料や製作費をの売り上げをのばしたい」企業の思惑の3者の利が一致したためではないかと思っています。