歯の感染と全身疾患
多くの方は、歯を爪や髪のような無機質なものと考えがちです。しかし実際は、食事の際に最初に使われる**「体外に露出した重要な臓器」**です。
東洋医学には、舌(舌診)や顔(望診)から体調を読み解く診断法がありますが、これもお口の状態が全身と密接に関わっていることを示しています。
歯の健康は、単なる見た目の問題ではなく、全身の健康の入り口なのです。
あまり実感がないかもしれませんが、歯科治療はすべて外科手術と同じです。病院の外科手術と同等の厳格な準備と、徹底した感染対策が欠かせません。
お口の中は、本来とても細菌が多い場所です。
感染対策が不十分なまま治療を行えば、根管や切開部位、治療中の傷口から細菌が侵入します。 その細菌が血流に乗って全身に運ばれると、心内膜炎や骨髄炎といった深刻な疾患を引き起こすリスクさえあるのです。
残念ながら、日本の歯科における感染対策は、世界標準から見て大きく遅れているのが現状です。その背景には、日本の「国民皆保険制度」が深く関わっています。
コストの乖離: 保険制度による治療費の設定が極めて低く、世界標準の感染対策に必要なコスト(材料・機器)を賄うことが困難。
ガラパゴス化: 安価なものしか流通しない閉鎖的な市場環境により、最新の医療水準から取り残されている。
この「制度の限界」が、患者様の安全を脅かす構造を生み出している事実は、あまり知られていません。
「治療したはずなのに痛みが引かない」「すぐに再発してしまう」……。 実は、こうしたトラブルの多くは、治療中の**「感染対策の不備」**が深く関係しています。
虫歯の治療中に神経が露出(露髄)してしまった際、その場所が清潔に保たれているかどうかが、神経を残せるかどうかの分かれ目になります。
一般的なケース: 感染対策が不十分な環境では、神経が露出した瞬間に細菌が侵入するため、神経を保存することが難しく、抜髄に至るケースが多くなります。
当院の取り組み: 徹底した感染対策を行うことで、治療中に神経が露出した場合でも、抜髄になることはほぼありません。
「神経を抜く」ということは、歯の寿命が半分になることを意味します。私たちは、あなたの歯を長く生かすために、神経の保存に全力を尽くしています。
すでに神経を失ってしまった後の「根管治療(根の治療)」においても、感染対策は成否を分ける最大の要因です。
特に奥歯(大臼歯)の治療において、**「ラバーダム防湿(ゴムの膜で唾液を遮断する処置)」**を行わずに治療を行うと、唾液中の細菌が根管内に次々と侵入してしまいます。
治療回数が重なるほど感染の機会は増え、結果として予後が悪くなり、最終的には抜歯を余儀なくされるリスクが高まります。
感染対策の不備によって再治療を繰り返すと、歯の形や高さが変わり、正しい「噛み合わせ」が失われていきます。
噛み合わせの乱れは、冒頭で触れた「顎のズレ」を誘発し、やがては全身の歪みや体調不良へとつながっていくのです。
歯科治療において、徹底した感染対策は「当然」行われるべきものです。しかし、日本の平均的な感染対策は、世界基準と比較して残念ながら遅れていると言わざるを得ません。
その象徴的な例が、治療中に使われる**「ユニット(診療台)を流れる水」**の問題です。
通常、歯科医院では水道水を使用しています。水道水には塩素が含まれているため、日常的な使用では大きな問題は起こりません。
しかし、歯科ユニットの内部は非常に細い管(チューブ)が張り巡らされています。休診日などで数日間水が止まった状態になると、管の中に残った水から塩素が抜け、細菌やカビが繁殖して「バイオフィルム」を形成してしまうことが知られています。
アメリカなどの先進国ではすでに厳しい対策が取られていますが、日本ではいまだにこの問題が十分に認識・解決されているとは言えません。
もし、汚染された水を使って治療を行った場合、重大なリスクを招きます。
むき出しの傷口への感染: 虫歯治療や根管(根の)治療中に、水と一緒に細菌が入り込み、再発や炎症の原因になります。
外科処置時の危険性: 特に抜歯や骨を削る処置では、細菌が直接身体の内部(血管や骨)に侵入する危険性があり、非常にリスクが高まります。
「お口をゆすぐ水」や「歯を削る時に出る水」が、実は感染の源になっているかもしれない――。当院ではこの事実を重く受け止め、治療に使用する「水」の質にまで徹底してこだわっています。
歯の感染と関係ある疾患
感染対策が不十分な結果、想像もしなかった治療結果が全身に現れることがあります。
