歯科医療× 東洋医学。口腔内から全身の不調を紐解く、根拠に基づいた包括歯科医療。

天秤の写真(左上)、何種類もの生薬がさらに並んだ写真(右下)

個々の体質を多角的に分析する「八綱弁証」を使って、特にバランスの崩れの原因を「生命エネルギー(氣1※)」が流れる「経絡2※との関連性から紐解き、噛み合わせや歯から派生する様々なトラブルの根本原因にアプローチします。

1※氣・・目には見えない生命エネルギーの元で、例えるとモーターを回す電気の様なもの。

2※経絡・・氣(生命エネルギー)が通る目には見えない通路、主なもので14本ある。


「なぜ、歯科医療に東洋医学の診断ロジックが必要なのか」

半調節性咬合器の模型(左上)、経絡のように自然に流れる滝の流れ(右下)

西洋医学的なアプローチ(局所の消炎や構造の修復)だけでは、慢性的なお口の痛み、顎関節の違和感、原因不明の不快感がスッキリと改善しきらないケースは意外にもとても多いです。

 

当院では、それらの原因を「口腔局所」だけにとどめず、全身に張り巡らされた生命エネルギーの通路である「経絡(けいらく)」の滞りによって引き起こされる「五臓六腑」のバランスの崩れが原因であると考えます。

 

東洋医学の伝統的な教えに「不通則痛(通ぜざれば即ち痛む)」という言葉があります。経絡の流れが詰まって滞ると、その部位に痛みや不調が生じるという意味です。

 

この痛みによって警告を発した経絡の詰まりは、結果的には身体のホメオスターシス(恒常性)の維持を根幹から支える「五臓六腑」の機能不全を招き、病気の一歩手前である「未病」の状態をつくり、様々な不調となって現れると私は考えます。

 

実は、お口の中にある1本1本の歯は、この全身の「経絡」と深く関連👉しています。当院の包括歯科医療では、歯のストレスを取り除き、噛み合わせを正しく修正することで、経絡の詰まりを取り除くアプローチも行います。

 

さらに、個々の体質に合わせた漢方薬草療法医療気功を組み合わせることで、「経絡のつまり」をより効率的に取り除き、西洋医学だけではアプローチが難しかった慢性的な不調に対しても根本からの改善を目指すことが可能となります。

 

つまり、東洋医学的診断法を使うことによって、「経絡のつまり」とそこから派生する「五臓六腑の問題」を明らかにすることで、歯とそこから生じた不調へのアプローチがより明確になるのです。


客観的な「八つの指標」で体質を分析する

八綱弁証とは、東洋医学の根幹を成す極めて論理的な体質分析の考え方です。

  • 八綱(はっこう):「表裏(病の深浅)」「寒熱(熱か冷えか)」「虚実(不足か過剰か)」「陰陽(エネルギーの性質)」の8指標で病態を客観的に把握。
  • 弁証(べんしょう):8つの指標から、不調の根本原因を分析・特定するプロセス。
  • 論治(ろんじ):分析に基づき、体質に最適な漢方・治療方針を選定する手法。

これら八綱の要素は、全て経絡の種類、詰まり具合と深く関係しています。

患者さんの内容を記録に取る姿(左上)、漢方生薬が並んだ棚(右下)

経絡の種類と性質

経絡には陰経(五臓)陽経(六腑)が存在し、「心・小腸、肝・胆、脾・胃、肺・大腸、腎・膀胱」のペアで身体の働きを制御します。隣り合う臓腑は「表裏」の関係で影響し合っており、各経絡との関係は八綱に基づき以下のように対応します。

  • 【表裏(病状の深さ)】
    • 表(軽症):主に陽経(腑)の流れる気の不足。
    • 裏(重症):深部へ進んだ陰経(臓)の詰まりや気の不足。
  • 【寒熱(体の熱バランス)】
    • 寒:心(温める)の気不足と、肝(巡らせる)の詰まり。
    • 熱:腎(冷ます)や肺(降ろす)の機能不具合。
  • 【虚実(エネルギーの過不足)】
  • ※「虚(きょ)」=体に必要なエネルギー(正気)が不足している状態
  • ※「実(じつ)」=体に不要なもの(熱、湿気、ストレス)が排出できず溜まっている状態
    • 虚:心・肝・脾・肺・腎の経絡における気血の不足や詰まり。
    • 実:腎・肝の滞りや、脾の排出力低下による湿気の停滞。
  • 【陰陽(エネルギーの性質)】
    • :潤し冷やす機能の低下(肺・腎の異常)。
    • :温め巡らせる機能の低下(心・肝の詰まり)。

自分が今、どの「臓3※が弱っているのかを知れば、正しい対処法が見えてきます。

 

それを実践することで、乱れていたバランスが整い、心身が良い方向へと循環(上昇スパイラル)を始めます。その結果、ご自身でも驚くほどの体調の改善を実感していただけるはずです。当院はこのような考えのもと、日々の歯科治療に東洋医学を活用しています。

 

3※臓:東洋医学では臓とは機能を表わしており、西洋医学の物質的な臓器とは異なる考え方です。


患者さんの接心をしているところ(左上)、下の状態と診断を表わしたイラスと(右下)

四診(ししん):五感を研ぎ澄まし、体表のサインから病態を特定する伝統的診断学

東洋医学における「四診(ししん)」とは、感覚や経験則だけに頼る曖昧なものではありません。

 

 局所の構造の異常のみを捉える西洋医学に対し、四診は「身体全体のバランスの乱れ」を医師の五感を通じて「病気として表に出る前の五臓六腑(内臓)のバランスの崩れ」を客観化する、確立された臨床診断学です。

 

四診は、以下の4つの独立した客観的プロセスで構成されています。

  • 望診(ぼうしん):顔色、肌の艶、そして「舌の状態(舌診)」を視覚的に観察し、内臓(五臓六腑)の乱れを読み解く。
  • 聞診(ぶんしん):声の調子、呼吸の乱れ、お口や身体から発せられるわずかな「臭い(五臭)」を聴覚・嗅覚で捉え、体内環境のバロメーターを測る。
  • 問診(もんしん):自覚症状の経過だけでなく、睡眠や便や尿の状態、のぼせや足の冷えなどを多角的にヒアリングし、不調の背景にある原因を突き止めます。
  • 切診(せっしん):手首の脈動(脈診)やお腹の弾力(腹診)に直接触れ、病態の深さや五臓六腑の機能のバランスを確認します。特に脈診は、単に脈拍数を測るだけでなく、五臓六腑の状態まで深く知ることができます。

望診、舌診:顔色と舌の表層変化から、五臓六腑の「未病のサイン」を捉える

  • 望診(お顔の診断):顔色や肌の艶、皺の現れ方から五臓の不調を読み解きます。例えば、赤黒い顔色は「心・腎」の負担、白い顔色は「肺」の弱りや「血虚(血液の不足)‥肝」の問題の傾向を示します。
  • 舌診(お舌の診断):白い苔は、「体内水分代謝(特に脾・胃)」の問題です。このように水分代謝が滞ると舌全体が浮腫んで縁に歯型(歯痕)がつきます。またストレスが高まると舌の先端や縁が赤く腫れるなど、特徴的なサインが現れます。

これらのサインと口腔内のダメージとを関連付けて深く分析し歯の治療と連携を取ります。

 

季節や日々のストレスよって「冷えやのぼせ」、「胃腸の不調」、「呼吸器系の乱れ」など体調が絶えず変化するように、舌の状態も、刻一刻と変化します。

舌のコケをブラシでこすって取ればよいという単純な問題ではないのです。


聞診:呼吸の乱れや口臭の性質(五臭)から、体内の機能低下を分析する

聞診とは、患者様の呼吸音や声の調子、そして身体が発する「臭い」から病態を診断する方法です。

 

臭いは身体の不調を表す重要なバロメーターであり、特に口臭は体内環境の状態をダイレクトに反映しています。東洋医学では、心身の不調や体質の傾きが「五臭(脂臭い・焦げ臭い・香ばしい・生臭い・腐れ臭い)」として現れると考え、臭いによってどの臓器に問題があり、どの臓(肝・心・脾・肺・腎)に問題が起きているかを知ることができます。

 

例えば、糖尿病(東洋医学では「消渇」)の状態では、特に「脾(ひ)」が弱っており、栄養分の消化吸収や水分代謝の低下に伴い、独特の甘い匂い(香)が生じることが知られています。

 

水分の吸収が悪く、栄養を十分に吸収できないために体内に余分な水分が溜まり、むくみ(湿気の停滞)を引き起こし、体力が低下してきます。

臭いと疾患とアロマの関係についてはこちら👉


問診:体調の経過、尿便の状態、冷えののぼせを聞き取り、不調の原因を突き止める

問診とは、単にお口の中の自覚症状や経過を伺うだけでなく、睡眠、尿や便の状態、のぼせや足の冷えといった全身の感覚まで多角的に聞き取りをするプロセスです。

 

経年的な歯の移動や、虫歯による噛み合わせの変化、適切でない歯科治療によって、身体に歪みが起こります。
これによって全身の経絡が詰まり、様々なバランスが崩れるのです。


歯と五臓六腑の関係

不調部位や症状

対応する五臓(経絡)

不調

小臼歯、犬歯

(上下3,4,5)

胃と脾

(胃経・脾経の経絡)

消化器系の疲れ、食欲異常、内臓下垂、皮膚のたるみ、皺、思い悩み(考えすぎ)。
股関節や、膝、足首などの違和感や痛み

などが現れやすい

下顎大臼歯

(下6,7)

上顎前歯
(上1,2,3)

下顎前歯

(下1,2,3

心と小腸(心経を小腸経の経絡)

睡眠の質の低下、気分の浮き沈み、不安感、焦燥感、動悸。

小指側の腕の筋や筋肉の痛み(押すと痛む)、肩甲骨の痛み、背中の真ん中あたりの痛みや違和感

などのサインが出やすい

上顎大臼歯

(上6,7)

肺と大腸(肺経・大腸経の経絡)

呼吸器の弱り、肌荒れ、悲しみの感情が強い。

親指側の腕の筋や筋肉の痛み(押すと痛む)、肩こり

などが起こりやすい

歯周病

腎と膀胱(腎経・膀胱経の経絡)

 慢性疲労、生命力の低下、白髪、抜け毛、骨粗鬆症

耳の異常、腰痛、首の痛み

に繋がりやすい

歯の部位ごとに五臓と関係が深い歯を治すことで五臓に良い影響を与えること可能性があります。

ご自身で、自分の歯のトラブルと、身体の感覚を比べると相関関係がより理解しやすくなり、対処がしやすくなります。

【東洋医学的診断に関するご注意】

※この表にある「歯と体のつながり」は、東洋医学の考え方や当院の経験からまとめた「健康の目安」です。内科などの病気を正式に診断するものではありません。歯の治療だけで、体の病気がすべて完全に治るとは限りません。当院が目指しているのは、お口をきれいに保つことで、病気になるのを防ぎ、体全体の健康を守るお手伝いをすることです。